ベビーフェイスと甘い嘘
「直喜。……この前、運動会の時はありがとう。翔が凄く喜んでた。あの時はお礼を言えなかったから、今言えて良かった……」
「……だけど、こんな風に……ここに来られるのは、困る。どうして平気な顔をしてここに来るの?私、もう会わないって言ったのに……声を掛けないでって言ったのに……」
「私の言った事……直喜にとっては大したことじゃないのかもしれない。でもね、直喜が何にも感じなくても、私はもう無理だよ。運動会の時は声を掛けて来なかったから、私の気持ちを分かってくれたんだと思ってた。……それなのに……」
潤んでしまった目を見られたくなくて、とっさにうつ向いてしまっていた。
直喜に会うと、何重にも重ねて隠して見せないようにしてきた涙がすぐに溢れてしまうから。
……直喜はそんな私を見ても、いつものように笑うのだろうと思った。
いつも感情をうまく隠して本心を見せずに飄々としている人だから、私が困っているのを分かっていても、きっと笑うんだって……