ベビーフェイスと甘い嘘

***

「わー、おいしそう!」

「まだ熱いから、二人とも気をつけて食べてね」


食欲をそそる香りと共に、温かそうな湯気を立てたオムライスがダイニングテーブルに二つ置かれた。


目をキラキラさせながら「いただきまーす!」と食べ始める翔と亜依。



……なんか、前にもこんな光景を見たような気がする。



「茜ちゃーん、ぼんやりしてないでこっちに来て一緒に飲もうよー」


そう言って、ダイニングテーブルから少し離れたソファーに腰かけたまま、私に手招きをするのは千鶴ちゃんだ。



ソファーの前のローテーブルには、既に手をつけられたビールと千鶴ちゃんが持ち込んだ大量のおつまみが並んでいる。


「ふぁっ……」


「ほえぇぇぇぇぇ……」


ソファーに向かいかけた身体を引き戻すように、傍らから鳴き声が聞こえた。


「あら、起きちゃったかなー」


身体を震わせてホワホワと泣き出す拓真をベビーラックから抱き上げた。


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