ベビーフェイスと甘い嘘
「あー、よしよし。どうしたのかなー」
ベビー服をめくってオムツを確認する。青く染まったラインを確認すると、手早くオムツを替えた。
「ありがと。茜ちゃん」
「ううん。こっちこそありがとう。夕飯の支度任せっきりで」
「見事なもんねー。茜ちゃん、もう二、三人育てられるんじゃないの?」
エプロンを外してソファーに座った芽依の横で、もう既に出来上がった様子で赤い顔の千鶴ちゃんが笑っている。
千鶴ちゃんは、笑い上戸だ。普段はキリッとした雰囲気の彼女だけど、酔うとけらけらと笑い出す。
まぁそこそこお酒には強いから、気を許している人にしかこんな陽気な笑顔を見せることはないんだけど。
「大げさだよ。一時間も面倒見てないのに」
「でも、ほら、今芽依ちゃんって三人の子どものお母さんでしょ?ほんの一時間だって助かるんじゃないの?」
そう言いながら、千鶴ちゃんはまたけらけらと笑った。
千鶴ちゃんと私と翔が拓実さんの出張している週末を狙って芽依の家へ泊まりに来たのも、千鶴ちゃんがこんなに楽しそうにしているのも、ちゃんとした理由がある。
私は手が足りない妹の育児を手伝う為に。
「もう!千鶴ちゃんったら!!」
……そして彼女は、私をからかうためだけにここに来ているのだ。