ベビーフェイスと甘い嘘
「さんにん?おかーさんが?」
「おばちゃん?あかちゃん、もうひとりいるの?」
千鶴ちゃんの言葉に反応した子ども達に「冗談だからね」と慌てて話しかけた。
二人とも真に受けて、これ以上変な噂が広がったら困るのに!
まだけらけらと笑っている千鶴ちゃんを軽く睨んでも、「冗談だからね~」と同じように返されてしまった。
相当酔ってるな……
子ども達が眠る前に潰れませんように……そう思いながら、私も久しぶりに飲むほろ苦い液体を口の中に流し込んだ。
***
「千鶴さん。そのとんでもない噂って、またあの女が言ってるんじゃないの?」
「うーん……違うんじゃないかなー。もう奈緒美ちゃんも出産したから、お店には居ないし……聞いて怒る人が居ないんだから、意味無いでしょ。あれは単におばちゃん達の井戸端会議の妄想が膨らんだだけよ、きっと」
「私も違うと思うな。今までの噂も全部灯さんが流したんだって知られてるんだもの。離婚の話も済んだし、これ以上私に嫌がらせをする必要も無いと思う」
子ども達を寝かしつけた後、そのままリビングでだらだらと三人で飲んでいる。
もちろんただ飲んでいるだけではない。この前修吾と灯さんに向かって離婚を宣言した話は、二人に真っ先に報告をした。