ベビーフェイスと甘い嘘
失礼な発言を挟んだ会話をしながら頷き合う二人を見て、ますます頭の中にハテナが飛び回る。
二人だけで勝手に納得されても、訳が分かんないんですけど……。
「……あーあ、きょとんとした顔しちゃって。ほんと、茜ちゃんって可愛いわ。たぶん直喜くんは茜ちゃんには知られたくなかったのね。……ま、私にはそんなの関係無いし、ちゃんと教えてあげるわよ」
「そもそも、お互いに嘘をついて肝心な所を隠してきたから、こんな風になっちゃったんじゃないの?……まさか茜ちゃんが知らないなんて思ってもいなかったから、びっくりしたわー。そこ知らなくて、直喜くんがただ遊んでるだけで有名だなんて聞いちゃったら、そりゃショックよねー」
……直喜に嘘をついたつもりは無かったけど、直喜の過去が気になるくせに傷つくのが怖くて、いつも踏み込むのを躊躇ってしまっていたのは事実だ。
「茜ちゃん、直喜くんが元々『ウサミ』で働いていなかったっていうのは知ってた?」
「うん。それは知ってる。本人が言ってたから。確か……奈緒美ちゃんの結婚式のあった月から働き始めたって。だから、6月……から?だよね。あと、学生の頃にお兄さんとお店を手伝ってたっていうのはコンビニの同僚が……宇佐美兄弟が遊んでるって言ってた人とは違う人なんだけど、教えてくれたから知ってたんだけど」