ベビーフェイスと甘い嘘

「そうかもね。だから直喜くんは奈緒美ちゃんを必要としていて、奈緒美ちゃんもそれに応えてあげてたのかもしれない。でも、それって恋愛なのかな……?私は違うような気がする」


恋愛じゃ無かったら……それは、一体何なんだろう?


「私も……奈緒美さんがウサミの事を一番理解してるって聞いても、だからそれが何?って思うよ。何も知らなかった茜ちゃんがウサミナオキの救いになったんだとしたら、それはそれで良かったんじゃないの?」


「心の中に踏み込むのはいつでもできるよ。今でも遅くないし……アホ修吾とちゃんと別れてからだって遅くない。それでもし、ウサミナオキのせいで茜ちゃんが傷ついたら、私が代わりにあいつの事、ボコボコに殴ってあげる。それでね、茜ちゃんは智晶ちゃんに慰めてもらえばいいのよ。どう?名案でしょ」


……はっ?!


「ちょっと、芽依!どさくさに紛れて、何言ってんの!!」


慌てて止めても時すでに遅く、向かい合わせに座っていた彼女の耳にもばっちりその『名案』は届いてしまっていた。


「そうそう。チアキちゃんに慰めてもらいなさい!!……って、チアキちゃんって……誰だっけ?何か聞き覚えある名前だけど。……芽依ちゃんの話ぶりからすると女性じゃないわね?……茜ちゃんもなかなかやるわねぇ」


***


結局この後、酔っ払った千鶴ちゃんに、面白がって悪のりした芽依まで味方をして、気がついたら九嶋くんとのアレコレまで洗いざらい吐かされそうになってしまった。



次の日は飲み過ぎたからか、悪酔いをしてしまったからか、二日酔いでダウンして体調は最悪だったけれど……


何故か心の中だけは霧が晴れたようにすっきりとしていた。



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