ベビーフェイスと甘い嘘
「……やめてよ。子どもじゃないんだから」
今までこんな風に慰められた事は一度も無くて、心の中では思いっきり動揺していたけど、思わずその手をバシッと乱暴に払ってしまっていた。
「やれやれ。……直ちゃんは真面目すぎるんだな。素直すぎるとも言えるな。見たまんまを、そのままそうだと思いこんじまうだろう?」
「例えば、こんな感じだ。直ちゃんは素直だから、丸いもんは丸いって思いこんじまう。だけど、見方を変えたらそうじゃないもんもあるって事だ……分かるかい?」
源さんは俺の態度も気にする事無く話を続けると、鞄から何かを取り出してベンチの上に置いた。
……ポテトチップス?
……どういう事?
…………源さんが何を言いたいのか、全く分からない。
怪訝そうな表情を見せている俺に、源さんはまたニコニコと笑いかけると、最初に蓋の方を見せてから容器をストンと横に倒した。
円柱の形をしたそれは、丸から長方形に変わる。
「目の前に見えるものが全てじゃないんだ。ほんと、心ってのは厄介なもんだ……認める前に蓋をしてしまえば、確かに楽だ。そうやって直ちゃんは自分の心を押さえこんじまうだろ?」
「ま、こうなってるのは、直ちゃんのせいだけじゃないけどな。向こうも真面目だけど……直ちゃんほど素直じゃないからねぇ」
イヒヒと笑いながらそんな事を言うから、ますます訳が分からなくなった。