ベビーフェイスと甘い嘘
「やっぱり今日はチアキさんだった」
当たり、と呟くとフフッとナオキが笑った。
『チアキ』さん?
ステージの上、ピアノの隣に立ち、歌っている女性に向かってナオキは軽く手を振った。
彼女もナオキに気がつくと、歌の合間にナオキに向かって微笑みを返していた。
……綺麗な人。
切れ長の涼しげな目元。すっとした鼻筋。紅い唇は程よく厚みがあって色っぽく、緩やかにウエーブがかかった髪は肩の上で纏め上げられていて、すらりとした細身の体系に黒のサテンドレスがよく似合っていた。
こんな大人っぽいドレス、絶対着れないな……
先日の結婚式での自分の子どもっぽい格好と比べてしまい、思わずため息が出た。
その時、ナオキから視線を外した彼女と目が合った。
私と目が合った瞬間、『えっ?!』という声が聞こえてきそうなほど、彼女は大きく目を見開いて驚いていた。
歌も一瞬止まってしまい、それに気がついたピアノに促されるようにしてまた慌てて歌い始める。
「いいね、期待通り」
そんな彼女の様子を見て、可笑しくてたまらない、といった様子でナオキは肩を揺らしてクックッと笑った。