ベビーフェイスと甘い嘘

「彼女、どうしたの?」

あんなに驚くなんて。

「さぁ、どうしたんだろうね」

そう言いながらもナオキはまだ肩を揺らして笑っている。

あっ、もしかしたら。

「誤解されてる?」

だとしたら、早めに解かないと。

「何言ってるの。誤解されたくないんだったらわざわざここにアカネさんのこと連れて来ないって」

それもそうか……

演奏が終わった。
彼女はステージの上からじっと私達のほうを見つめている。


ナオキはそんな視線を気にすることなく、私の肩を抱いてカウンター席のほうへと向かって行った。


「珍しくて驚いたのかもね。俺が、ここに誰かを連れてきたことなんて無かったから」

「アカネさん、とりあえずあの人のほう見てにっこり笑ってくれる?」


よく分からなかったけど、言われた通りに彼女に向かって笑いかけてみる。


彼女は、はぁ、とちょっとだけ溜息に近いような息を吐いてから、サテンドレスの裾をつまんで客席に向かってお辞儀をした。
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