ベビーフェイスと甘い嘘
「…………からかわないで」
冗談じゃないと感じても、その告白はとても私に向けられたものとは思えなくて、思わず否定する言葉が口から出てしまっていた。
「……からかってないよ。茜さんは、いつもそうだね。こうなんだって自分の気持ちも、人の気持ちも決めつけて、見ないふりをして。傷つきたくないって思ってるくせに……自分の気持ちに嘘をついて、いつも傷つく方を選んで、もがいてる」
「本当は、嘘でもからかってる訳でも無いって。俺が本気で言ってるって、ちゃんと気がついてるよね」
……確かに、甘い言葉をかけられて私に気持ちがあるんじゃないかって思った事はあった。
けれど、直喜は嘘つきだと思いこんで、すぐに自分の気持ちに蓋をした。
また、私じゃない誰かを愛している人を、本気で好きになってしまうのが怖かったから。
「前に、茜さんに俺を選んで欲しいって言ったよね。茜さんには捨てられないものや、守らなきゃいけない存在がいるから…………」
「あの時は、あなたにとって一番大切な存在でなくてもいい。俺からは、気持ちを伝えられないから……ただ、俺の事を『愛してる』って、そう言って欲しかった」