ベビーフェイスと甘い嘘
「茜さんさ、俺が『愛してる』って言って欲しいって言った時、『あなたはいつも嘘をつくから、好きにならないって決めた』って言ってたよね?」


「それってさ、俺が嘘をつかない素直な奴だったら、ためらわずに好きになれるのにって……そういう意味にも取れるよね?」


「……ねぇ、少しは俺の方に気持ちを向けてくれた瞬間もあった?俺の事を想ってくれた時もあったって……そう都合良く思ってもいい?」


「……それは」


言葉が出て来ない。


だけど、決別の言葉を告げたつもりで無意識に隠していた気持ちを吐き出していた恥ずかしさに、どんどん顔が熱くなっていく。  


「……ほら。またそんなに真っ赤になって……そんな顔をされたらやっぱり都合良く考えるし、自惚れるよ。あんな言葉で引き下がれるほど軽い気持ちで言ったんじゃないから」


「もう、俺は我慢しないし、諦めない。茜さんが誰のものでも、俺に気持ちがなくてもいい。欲しいものは欲しいって、はっきりと言うよ」

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