ベビーフェイスと甘い嘘

……直喜も私と同じで、ずっと気持ちを押さえていたの?


私の事を想っていてくれたの?


私達……


ずっと前から、想い合っていたの?


「……茜さんはさ、きっとカケルの前では笑顔で過ごして、辛い顔なんて一つも見せないんだよね。それで、後でこっそり涙を流すんだ」


「……今日だって、あんなに目元を潤ませて、今にも涙を溢しそうな切ない顔をして……後で一人で泣くつもりだった?……それとも……誰かの前で泣くつもりだった?」



「もう……俺以外の誰かの前では、泣かせたくない」



「茜さんの涙は俺のものだよ。誰にも見せないで。……だから、智晶さんの所にも、もう行かないで」


嫉妬や独占欲を隠す事無く、真っ直ぐに私を見つめるその漆黒の瞳に、目眩を起こしそうなほど、胸の鼓動が高まっていく。

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