ベビーフェイスと甘い嘘

「……まるで、子どもみたい。ねぇ、茜さん」


急にパッと振り向かれ、驚いて思わず言葉に詰まる私を見て、奈緒美ちゃんは苦笑いを溢した。



「……別に取って食いやしませんよ。……まぁ、あんな事した後だから、私を信用できない気持ちは分かりますけどね」


そう言うと、奈緒美ちゃんはエプロンのポケットからウサギのチャームの付いた鍵を取り出した。


何故か玄関を開ける前に玄関の引き戸の横に置いてあるプランターの下を見て、そこに鍵が置いてあるのを確認してから開けていた。



……何で鍵があるのに、鍵を持ってきて開けるの?



「……誤解しないでくださいね。鍵を持ってるからって出入りしてる訳じゃないですから」



決して、奈緒美ちゃんが出入りしているのを不思議に思っていた訳じゃない。


「ちっ、違うの……あの……そんなつもりじゃなくて……」


焦るばかりで言葉が出ない私を見て、奈緒美ちゃんはクスッと笑うと、


「立ち話もなんですから、どうぞ」



と、直喜が『宇佐美家の離れ』だと言っていた家の中へと入って行った。


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