ベビーフェイスと甘い嘘
「茜さんのお子さん……カケルくん……でしたっけ?まだ幼稚園?保育園ですか?お迎えの時間大丈夫なんですか?」


奈緒美ちゃんは、リビングのソファーに私を座らせるとキッチンの中に入り、慣れた様子でケトルを出してお湯を沸かしていた。



『出入りしてる訳じゃないですから』



さっきの言葉が無かったら、たぶん、私はその様子を気にしなかったと思う。


こんな……どこに何があるか分かってる人が、ここに出入りしてないって言うのは、さすがに無理があるんじゃない?


さすがにあんな事を言われてしまうと、奈緒美ちゃんの仕草がいちいち気になってしまう。


奈緒美ちゃんとは、突然お店に来て私が叩かれて、直喜が迎えに来て帰って行って……それからは会っていない。



千鶴ちゃんから出産した事は聞いてはいたけど、気を遣ってくれたのか、それ以外の話を聞く事は無かった。



あんな気まずい状態で別れて以来なのに、何故か奈緒美ちゃんからは私に対して刺々しい雰囲気は感じられなかった。



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