ベビーフェイスと甘い嘘
それに、いつから話を聞いていたのかは分からないけど、どのタイミングで話を聞いたとしても、私と直喜が花火大会の……あの日限りの関係じゃないって気がついてもおかしくない会話ばかりだった。



「私が迎えに行って良かったですよ。お義父さんだったら、今頃直喜ちゃん殴り倒されちゃってたかもしれませんね」



フフッと笑いながら私に話しかける奈緒美ちゃんを、信じられない物を見るような目で見てしまっていた。



「奈緒美ちゃん……」



思わず呼び掛けてしまったけれど、それ以上は唇が震えて言葉が出て来なかった。


「ーー茜さん」


声が出せない私の様子を察して、先に奈緒美ちゃんが口を開いた。



「あの時は、ごめんなさい」



その言葉に、唖然とした。


また叩かれてもおかしくない状況なのに、こんな風に謝ってもらえるとも思って無かった。



何を話しても、我が儘な子どものように聞き入れてもらえなかったあの日の奈緒美ちゃんから……一体何があって、こんなに変わったのだろう?


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