ベビーフェイスと甘い嘘
ーー 相澤店長の過去。
店長は元々医師で、その病院には初花ちゃんのおばあさんが通っていたデイサービスがあった。
初花ちゃんは、そこにボランティアとして度々訪れていた。
そう。
二人は過去に、何度も顔を合わせていたのだ。
……じゃあ、知り合いだったのにお互いに初対面だと嘘をついていたの?
そう思った私に、初花ちゃんはスマホで一枚の写真を見せてくれた。
七夕の写真のようで、色とりどりの飾りや短冊で飾り付けられた笹を囲んでおじいさんおばあさんと、看護師さんと、白衣を着た男性二人が写っている。
そのうちの一人は、私も知っているおなじみのあの人だった。
「あっ、源さんがいるね」
「そうです。で、隣にいるのが私のおばあちゃんで……この人が、店長です」
初花ちゃんは白衣を着た人の一人を指差した。そう言われて目の前の写真を凝視したけど、今の店長と何一つ共通点の無いその姿に驚いた。
全くデザイン性の無い黒ぶち眼鏡に、顔全体を覆うようなボサボサの髪型。
白衣も、隣にいる男性がパリッと糊の効いていそうな物を着ているのとは対照的に、なんだかヨレヨレのものを身につけているように見える。
「…………これじゃ、気がつかないね」
初花ちゃんが店長の"正体"に気がついたのは、つい最近なんだそうだ。
だけど、それも無理も無いと思えるほどの変身っぷりだった。