ベビーフェイスと甘い嘘
だけど、これで店長がどうして馨さんの名前を知っていたのか、
エリアマネージャーとして知っていたにしても、どうしてその名前を初花ちゃんの耳に入れるなと言ったのか……
ずっと疑問に思っていたのだけど、今の初花ちゃんの話を聞いて、ようやく分かった。
前に鞠枝さんから聞いていた話と合わせて、点と点が繋がったような感覚だ。
……一つだけ、納得できなかった事があったけど。
「あなたたち、付き合ってなかったの?ほんとうに??」
私の頭の中では、二人はもうとっくに付き合っている設定になっていた。
付き合っているけど、初花ちゃんは過去の事があって、気持ちを全部店長に向ける事ができなくて苦しんでいるのだとばかり思っていた。
どうやら、私の勘違いだったみたい。
思わず出た大声に、初花ちゃんは「茜さん……声、大きいです」と真っ赤になっていた。
「あら、ごめんね」と謝りながら、カウンターの方を見ると、バリスタの男(ひと)が、何も聞こえてませんよと言いたげな表情で、わざとらしくそっぽを向いていた。