ベビーフェイスと甘い嘘
22時。芽依の家に着いた。
内田 芽依(うちだ めい)は、2歳下の私の妹だ。
しっかりものの妹は、結婚したその年に駅前近くに家を建てた。
翔と同じ年の亜依(あい)ちゃんと……今お腹の中に6ヶ月になる赤ちゃんがいる。
私と同じ年の旦那さんは出張が頻繁にある職場に勤めているので、「芽依が大変だから手伝いにいくね」なんて言い訳をちょこちょこ使って、息抜きをしに来ている。
「ただいまー」
妹の家だけど、勝手知ったる我が家という感じで、正直今は我が家よりも寛げるかもしれない。
「お帰り、茜ちゃん」
芽依は私のことを名前で呼ぶ。
千鶴ちゃんが「あんた達って双子なの?」と言ったくらい仲良しだけど、顔はあまり似ていない。目鼻立ちのはっきりとした美人で、童顔の私と並ぶと芽依のほうが姉に間違われた事が何度もあった。
明るい茶色に染めた肩までのボブにふんわりとしたパーマをかけていて、いつもきっちりとメイクをしている。母親になってもおしゃれに手を抜かない自慢の妹だ。
「翔、ちゃんと寝た?」
そう言って寝室のほうをのぞこうとして、ドアにかけたその手を止められた。
「茜ちゃん、タバコ臭いよ。あの二人と一緒だったのに、そんなお店行くなんて珍しいね」
その言葉にドキリとする。
裕子姉さんも、千鶴ちゃんもタバコは吸わない。
二人をよく知っている芽依の疑問は当然だった。
疑われた……?
一瞬そう思ったけど、芽依の言いたいことは違ったらしい。
「茜ちゃん……妊活中なのに、迂闊すぎ」