ベビーフェイスと甘い嘘
「……ごめん。お風呂入ってくるね」
疑うとか、そんな事を考えていた自分が恥ずかしくなる。妹は私の身体を心配してくれていたのだ。
ここ一年、二人目の為に妊活というものをしていた。本格的なものではなくて、身体を冷やさないようにするとか、基礎体温をつけるとか、ごく些細なことだ。
それでも結果には結び付かなくて、本格的に病院に通うところまで考えていた。
熱いシャワーを浴びながら考える。
思い出すのは夫の言葉。
「そんなに無理して作る必要があるのか?」
『無理して作る』とか『必要』が有るのか無いのかで物事を考えようとしている、そんな冷たい響きの言葉にいちいち傷つく私の心は弱すぎるのだろうか。
自然に授かればそれにこしたことはない。
……だけど待っていたってあなたはこの身体に触れてくれないじゃない。
鏡に映る身体を眺める。
少しだけ丸みを帯びて少しだけ重力に負けて……
歳を重ねると、こうしていろいろと諦めなければならないことが増えていくのだろうか。
この身体に夫が触れる時、常にあの人と比べられているのだろうという事実にも目を反らして。
そんな諦めが積み重なって心が苦しいと叫べば、それは涙になって心の底にたまっていく。
じわり、と視界がぼやけていく。
その時、さっきのナオキの言葉を思い出した。
「もう泣かないでね」
…………泣かないわよ。
半ば意地に近い感情で、私は無理やり涙をとめた。
こんなことで、泣くもんか。