ベビーフェイスと甘い嘘
『ばらされたく』なかったら……?
混乱、というものは突然降って湧いてくるように現れるものなのだろうか。
月曜日。朝のコンビニのスタッフルーム。いつものように出勤の準備をしていた私に、挨拶もそこそこにこんな言葉をかけてきた人がいた。
「……ねーさん、どういうつもり?」
「はぁ?」その問いかけに私は間の抜けた返事を返す。
『どういうつもり』も何も……私、何かしたっけ?
溜息を吐きながら、その人は言葉を続けた。
「とぼけないでよ……ナオキとどういう関係?」
人って、思いもしない言葉を聞くとしばらく思考が停止してしまうらしい。
どうして目の前のこの人から『ナオキ』という名前が出て来るの?
どうやら思考と一緒に動きも止まってしまったらしい。そんな私の様子に気がつくと、
「……もしかして気がついてなかった?」
そう言ってその人は……
……九嶋くんは「やられた。ナオキのやつ」失敗したー、と言いながら苦々しい表情をした。
「九嶋くんは……ナオキと知り合いなの?私達のこと、どこで見たの?」
声を潜めてそう質問する。
今日の相方はお喋りな子だ。こんな会話を聞かれたらたまらない。