ベビーフェイスと甘い嘘

「私、ずっと地元ですもん。『ウサミ』には、今でもお世話になってます」


週3は行ってますかねー、と笑う初花ちゃん。


……残りの4日はコンビニとスーパーで済ませていることを私は知っている。


修吾は出来合いのものをあまり好まないので、お弁当や惣菜はめったに買わない。


結婚前も毎日自炊をしていたし、お惣菜だってせいぜいスーパーで買うくらいで、『ウサミ』のお店の存在は知っていてもわざわざ足を運んだ事は無かった。


……独身はいいわね、と呑気に笑っていられたのもここまでだった。


「相変わらず、直喜先輩は大人っぽくて素敵だなぁ」


初花ちゃんが独り言のように小さく呟いた言葉が耳に入る。


………………先輩?


「……初花ちゃん。直喜……さんって、幾つ?」

「小、中一緒なんですよ。私の一つ上です」


ってことは……25歳?!


見えないですよねー。なんてまだ目をキラキラさせて話している初花ちゃんの言葉に目眩がした。



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