ベビーフェイスと甘い嘘
「8歳も年下の子にも、『オトコ』は感じないわよ」
そう言った途端、九嶋くんが吹き出した。
……わざと黙ってたな。
「歳、いつ分かったの?」
くっくっ、と肩を揺らして笑いながら聞いてくる。
「昨日、直喜がコンビニに来た時。初花ちゃんが一つ上の先輩だって言ってたから、びっくりした。九嶋くんだってわざと秘密にしてたんでしょ?」
「うん。知らない方が面白いかな、って思って」
しれっと言われた。
可愛い顔をして、いい性格してるわ。ほんと。
「ねーさんっていくつだったっけ?もう30になった?まだだよね」
「……33だけど」
「思ったよりいってるね」
「……うるさいわね」
「直喜は?ねーさんの歳知ってるの?」
「知らないんじゃないかな」
「結婚してるのは?子どもがいるのは?」
「知ってるんじゃない?結婚式の時は指輪付けてたし、この前『sora』っていうお店でご飯食べたんだけど、その時に子どもの話をしたけど特に驚いてなかったよ」
九嶋くんは私のその言葉にちょっと微妙な表情になった。
「あ、そっか『sora』に行ったんだよね……」
「うん。最近ファミレスしか行ってないから、ちゃんとしたお店で緊張したけどね……。でも、思ってたよりもアットホームなお店でお料理も凄く美味しかった。また行きたいな……」
そう言いながら頭の中で、あの日食べたトマトクリームパスタや、鶏のコンフィ、マスカルポーネのアイスなど美味しかった料理の味を思い出してにんまりとしてしまった。
「『アットホーム』か……やっぱり、ねーさん鋭いよ」
だから、彼が小声で言ったその言葉は私の耳には届かなかった。