ベビーフェイスと甘い嘘

「いい名前だと思うんだけどなぁー。……だってすぐ照れたり真っ赤になっちゃう可愛いあなたにピッタリの名前でしょ」

「いつ真っ赤になったのよ……」


何言ってるのよ。出来上がったコーヒーを直喜の前に置きながらじっと睨み付ける。


直喜は私の刺すような視線なんて気にもしないで、涼しい顔をしている。


それからさっと回りを見渡すと、形のよい目を細めてにっこりと笑った。


そして左手を伸ばしたと思った次の瞬間、私は彼の腕の中に閉じ込められていた。


……抱き締められてる?


突然のことで、頭で理解するのに少し時間がかかってしまった。


はっ、と気がついて「ちょっと、何するの」と言いながら慌てて胸を押して離れる。


「ほらね、真っ赤になった。やっぱり茜さん可愛いな」


直喜はからかうようにそう言って、私の顔をのぞきこんできた。


「……帰れ」

「えっ?」


「帰れって言ったの!店の中で何やってるのよ。信じらんない!」


店内に他のお客様はいないけど、スタッフルームには店長と初花ちゃんがいるのに!
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