したくてするのは恋じゃない
んっ?
何だか影が落ちる。
「よう」
前の席に許可なく座った。
「…剣吾」
「寄ってみるもんだな。
何だか居そうな気がしたんだ」
「確率は高いはずよ。
私は居ることが多いって言ったし。
剣吾が来れば、会うんじゃないの?」
「そう言っちゃ、そうなんだけど。時間帯にもよるだろ。
相変わらず読んでるんだな。
昔から見掛けると読んでたな」
「図書室は静かに本を読む所。眠る場所ではありませんから。
いびき、煩くて見つかって、よく追い出されてたよね」
「ああ、懐かしいな。涼しくて静かなんだ。あんな快適なとこ、みんな寝るっつうの」
「まあ、本の為に快適なんだけどね」
「どれどれ?昔と同じで小難しいの読んでるのか?」
「あっ、駄目!」
死守した。絶対見られたくない。カバーはかけてあっても見られてはバレてしまう。
「何…驚かすなよ。必死だな。あ、アレだ、見られちゃまずいんだ。エロいやつだろ官能小説…」
慌てて剣吾の口を塞ぐ。
手で押さえた。
「違う、ちょっと…黙って。そこまでじゃない。…ただの恋愛小説」
声を潜めて囁くように言う。
「ん、がぁーっ。解ったから。
いつまで塞いでんだよ」
剣吾に手をひき剥がされた。