したくてするのは恋じゃない
「はい、どうぞ」
カフェオレ、サンドイッチ、…とバナナジュースかな?
「これは豆乳バナナ。
先にこれ飲んでからの方が胃が楽だよ。
いきなり固形物は入らないでしょ?」
「うわ、有難うございます、いただきます。
…美味しいです」
唇の端を濡らしている豆乳バナナを人差し指で軽く拭った。
ん、何だか視線が…。
「はい?なにか?」
「んー、聞いてもいいかな?」
「何でしょう」
「前から知ってはいたんだけどね、お客様だから」
「は、い?」
「金曜とその前と一緒だった、剣吾君?だっけ。
あのカレは絵里子ちゃんの彼?」
「ブーーッ」
よく噴き出す子だと思われてるよね…。
慣れたモノである。マスターは何事も無かったかのように拭きながら、違うんだ、と何やら納得している。
「はい、違います。
もっと言えば、元彼でもありません」
「そうなのー?」
「はい、高校の同級生で、上手く言えませんが、腐れ縁みたいな感じです。
あの調子なんで、親子のような、姉弟のような、なんだかずっと昔から知り合いみたいな、変な感じなんです。
妙に遠慮がなくて、荒っぽい所もあるんですけど、物凄く長い間会わなくても、何も変わらないというか、すぐ馴染むというか…」
「はい、ストーップ。
もういいです。充分解りました」