したくてするのは恋じゃない
お誘いの意味?
待ってます、なんて言って帰って来たものの…、どういう要件なのか聞いてもなく…どうしたらいいのか。
夜出掛けるとなると、いつものこのラフな格好って訳にはいかないよね。
まだ時間もあるし、取り敢えずシャワー浴びてサッパリしよう。
その前にさっき頂いたマカロンを…。
中身を確認する間もなく、取り敢えず頂いた物は冷蔵庫に入れちゃったらしいから。
カラフルなマカロン。
ピンクとグリーンを摘んだ。…甘い。
ピーッ。お湯が沸いた。
カップにティーバッグを入れ、注ぐ。
マスターが丁寧に入れてくれる物とは違うが、私はこれで充分。
立ち上がるアールグレイの香りを嗅ぐ。も一つ摘んだ。
シャワーを浴び、大袈裟にならない程度にと、ノースリーブのネイビーのワンピースを着てみる。
シンプルでラインの綺麗なモノだ。
カーディガンを羽織れば、ま、こんな感じなら無難かな。
あとはメイクをして、と。
元々上手じゃないし、しっかりメイクも苦手なので、いい意味でナチュラルメイクでいこう。
ものは言いようだが、ナチュラルメイクしか出来ないのよね。
…よし、出来た、大丈夫。
ぼちぼち時間が迫って来た。
ピンポン。
あ、きっとマスター。
カチャ。
「…お迎えに参りました。
お嬢さん、準備は大丈夫ですか?」
「はい、万端、整ってます。あのこんな感じで大丈夫でしょうか」
「はい。よく似合って素敵ですよ。
…では参りましょう」
腕を腰に当て、私の腕を組む様に促された。
…軽く絡ませた。
「ま、すぐ車に乗るんだけどね」
助手席までエスコートされた。
ドアを開け、どうぞ、と手を取る。
黒のツーシーター。
…マスターっぽい車だ。
いつものカフェスタイルも素敵なのだが、今のスタイルも…さりげなく素敵だ。
トドのつまり、何を着てもダンディーで素敵なのだ。
ライトグレーのVネックのシャツに濃紺のジャケット。細めの黒のボトム。
とてもスマートだ。
今更事細かく容姿を語るには、私の理屈っぽい表現は野暮になる。
顔を含め、体つき…、トータルで、なんて色気がある人なんだろう。
「では参りましょう」