したくてするのは恋じゃない
会ってしまうのは
鍵を取り出し、部屋に入ろうと鍵穴に差し込んでいた。
…ん?何だか遠くの方が騒がしい…。
人がざわついているような、何かあったのだろうか。
通りすがりの人達が口々に話しているのが微かに聞こえて来た。
「あ、おい、解った…強盗らしいよ」
「うっそ、本当に?」
「ああ、すぐそこの、通り。交差点の向こう」
「もしかしてコンビニ?アソコの?」
「そう、コンビニ。よく解んなかったけど、店員脅して店内でモタモタ時間くってたらしい。
誰かが通報したのか、あっという間にお巡りさんが来て、パトカーが来て」
「うんそれで?」
「何かさ、かなり暴れて大立ち回りになったらしい、包丁も持ってたらしいよ、こうブンブン振り回して」
「怖ー、それで?」
「非番て言うの?たまたまその刑事さんが取り押さえたらしいよ。
偶然、店内で立ち読みしてたって」
「へえー。やたら具体的な情報ね。…本当?
何だかドラマみたいだし、出来過ぎてる感がハンパない感じ。
お店の人は?無事?大丈夫だったの?」
「ああ、抵抗しなかったのが良かったらしい。
無事だって」
「良かったね〜」
「ああ、だけど、こえーよなぁ。こんな静かなとこでさ。もろ近所って感じじゃん。物騒な事起きるなんてさ」
「刑事さんも大変な職業だよね。一歩間違ったら怪我とか、下手したら刺されて死んじゃうかもしれないじゃん」
「まあ、そうならない様に日頃から鍛えてるんだろ?」
「鍛えてるって言っても…、私はやだな、もし旦那さんだったら。
毎日気がきじゃないって言うか…心配で堪らない…」
ドアノブに手を掛けたまま、気がつけば若者達の会話にずっと聞き耳を立てていた。大分離れたのだろう、もう聞こえなくなっていた。
強盗か…、流石に近い所であると怖いな。
捕まって良かった。