したくてするのは恋じゃない
「あの、剣吾?」
「…」
じっと見てる。
「良かったら、…そろそろどいて貰っていいかな?事情も解ったし…」
「…」
まだじっと見つめられてる。
「…あの、ね。剣吾?」
「このまま…」
やっと口が動いた。
「え」
「このままキスしたら駄目か?」
ぇえー?もうー、流行りなの?!…どいつもこいつも聞いてくるのは。
何なんだー、最近。
ん、んっ!
返事を待つつもりは無いらしい。有無を言わさず、塞がれていた。
顔の両側に腕をついたと思ったら、まるで腕立て伏せするみたいに…。
ほんのりビールの香りがする。
なんて、呑気に?思ってた。
ん、んん、更に深くなって…き、た。
はぁ、や、これはまずいんじゃ…、いや、味が不味いんじゃなくて…やばい、やばいんじゃない?
あ、ん゙っ。角度を変えて…一向に終わる気配がしない。
やばい…やばい度が増す…もっと、と、思ってる?
胸が苦しい…。締め付けられる…。心臓がもたないよ。
剣吾の背中に腕を回しかけた時、フッと離れた。
なんて顔…。はぁ…。剣吾、酔ってるからなの?
色気がハンパない…。
いけない。持ってかれてる?…はっ?
「…酔ってるからしたんじゃないぞ。あれくらいで酔ってねえし…」
手を引かれ、起こされた。お互い向き合って座り直した。
剣吾は脱げかけの上着を着直し胡座をかいた。
「絵里子、ずっと好きだったんだ」