したくてするのは恋じゃない
後輩との時間は少し頭を休める息抜きになった…なったのか?
あの子はあの子で、…どうしたものか。
出来るけどおちゃらけているのか…あのまんまなのか。
今だに、見抜き切れない。
仕事帰り。
私は私で懲りずにまたお店に寄っていた。
寄ることは約束、が、頭のどこかにしっかり鎮座していることもあるのかな?
いや、今のところ、努力して来ている感は無い。
「こんばんは。ミルクティーをお願いします」
入ると同時に告げ、いつもの席に向かおうとした。
「いらっしゃい、…お帰りなさい。今日は食事はいいのですか?」
引き止められるように話し掛けられた。
「はい、何だか食欲が無くて。…熱っぽいので」
しまった…。最後の一言が余計。そんなところだぞ絵里子。迂闊過ぎる…。
「大丈夫?」
おでこに手を当てられた。
っ!大きな手…。少しヒンヤリして気持ちいい。
急なことに驚かされた。ぼっ…余計熱が出そう。
「ちょーっと、あるかな…取り敢えず、座ってて?」
本気の病気の熱とは違うんだけど…。
本を取り出し読む。
ミルクティーが運ばれた。
「もう少し待ってて」
マスターが下がっていく。
やがて、小振りのグラタン皿が運ばれてきた。
「僕は医者じゃないから、意味はないかも知れないけど。
食欲がないと言われて、ほっておけないからね。
家に帰っても、面倒で食べないかも知れないし。
茄子は確か、身体を冷やす食べ物だった気がする。それが今の絵里子ちゃんに、良いのか悪いのかは解らないけど。何も食べないよりはいいでしょ?
だから、茄子とズッキーニとお豆腐のグラタン。
熱いから充分冷まして、気をつけて。
絵里子ちゃんは猫舌だからね。
…僕がフーフーしてあげられるといいんだけど。
まだお客様がいらっしゃるから…残念です」
トレイで隠すように控え目にウィンクして行った。