したくてするのは恋じゃない
火曜。
「先輩。理屈っぽい」
「え゙っ。何?」
恋に関する突っ込みかと過剰に驚いた。
「もう…、ここですよ。ここの意味が解らなくて聞きに来てるのに。
前置きみたいな補足説明は要らないんです。
ズバリ、確信だけでいいんです。
余計なこと言われても、まりな、必要ないと思っちゃって覚えませんよ」
覚えませんよ、って他人事か?…。
しかも、あれだけ注意してるのに、仕事中に自分を名前で言うんじゃ無いって。
そしたら、先輩と、まりなの仲じゃないですか、他の人との会話ではちゃんとしてますから、ご心配なく、なんて言う始末。…はぁ。
…私は?私とはちゃんとじゃなくていいのか?
親しくしようという気持ちは解るけど…。
どう言っていいか、解らなくなった。
「解らなくなったら、流せばいいんですよ。
自然な流れに任せれば、成るようになります。
あ、勿論、許される範囲ですよ!」
全く、…この子は。…このタイミングで。
仕事の事とも恋愛の事とも取れるような事を言う…。
「それはそうと」
まりなが声を潜める。
こういう事は出来る。
私語ではあるが。
「最近、大規模な窃盗団が荒らし捲ってるって、ニュースで言ってましたよね。
企業の金庫、次から次へとやられてるって。
人が遭遇してないからまだ負傷者とか出てないみたいですけど、鉢合わせしたら容赦ないらしいですよ。
怖いですよね」
「そうね、何だかニュースで言ってたわね。
貴女も遅くまで残業しないように気をつけないとね」
「大丈夫です。まりなは役立たずなので、残業してまで仕事は振られませんから」
Vサインしてる…。
役立たずっていうのは…いつまでもそれでは困るんですけどね…。