したくてするのは恋じゃない


「ごめん。苦しいですよね。
恋するという事は、苦しい事でもあるのですよ。
時と場合によりますが。
貴女のような人が本気で恋をすると…戸惑うはずだ…」

私は泣いている?…。

「貴女は頭の回転の早い賢い人だ。
でも、失礼な言い方だが、恋に関してはまだ赤ん坊だ。どうしても理屈が先行する。
理屈で解決出来ない感情を、どうしていいか解らなくなっているのです。
焦らなくていいんですよ。
慌てる必要なんか無い。
僕にしてみれば、今まで待ったんです。
…貴女の心の向く方へ、自然に任せればいいと思います。
例え、僕がグイグイ攻めたとしても、貴女は貴女のペースで…良いと思いますよ」

身体を離す。

「どうです?少しは納得出来たのではないですか?
…大丈夫。…泣かないで。
…絵里子ちゃんの泣き顔は初めてだ。不謹慎だが、誰にも見せたく無いな。
さあ、涙を拭いて…」

そっと両手で顔を包むように親指で拭ってくれた。

腕の中に囲い込むようにされた。

「あぁもう…、離したくないな。
ある意味、絵里子ちゃんはズルイんだよ?」

「?」

「僕はいつも試されてる。紳士になれ、ってね。
…自覚が無いから解んないと思うけどね。
君は…、いつもいつも、…とても僕を困らせているんだよ?」

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