したくてするのは恋じゃない


こうして甘やかされてる事も、私が通いつめる一理なのだろうか?何故か自分に疑問形だけど。

基本、私に限らず、誰でも時間は気にせず過ごして良い事になっている。

私が特別という事ではない。

こんな立地の良い所にあるんだ。
ランチタイムは、さぞ混んで忙しいのだろうと思っていた。
でも、静かに時間を過ごして頂くのが目的だと、敢えてランチタイムは店を開けないのだ。

長年の事で周知されてるから、困らせるお客さんは居ない。

たまに新参者が現れ、ランチタイムに開けてくれないか、と熱望するようだが、丁重にお断りしているそうだ。

静かに流れるような時間。
マスターのおもてなしの心の現れなのだろう。


さてそろそろ、今度こそ本気で帰らなくっちゃ。
名残惜しさもあり、腰が重い。


5時少し前か…。

お昼を回ってから来たんだから…居座ってるな〜。
帰りに本屋さんに寄って…、明日は日曜だし…、食材も減ってるから、スーパーにも寄って帰ろう。

荷物を整え、お会計をしに席を立った。


「帰ります。ご馳走様でした。いつも…すみません長くて」

「帰っちゃうの?もっと居ていいよ?
なんなら…」

「いえいえ、本当、もう帰ります」

お釣りを掌に乗せられた。

「そう?…。じゃあ、気をつけて帰ってよ?」

「はい。また。
きっとすぐ来てしまいます。
ご馳走さまでした」


カランカラン。

私と入れ替わりに来客のようだ。

ドアから体を避ける。

チラッと見られたような気がした…。

男性は歩みをすすめた。

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