したくてするのは恋じゃない


静かにベッドに下ろされると眼を見つめられた。動けない。
耳に首筋に唇が這う。漏らす吐息がもう熱い。

バスローブの紐に手が掛かる。

「あ、お願い、ま、待ってください…」

恥ずかしい…だけど言わずには居られない。

「私…あの…」

何て言ったらいいだろう。

「大丈夫だよ…」

頬に手が触れた。

「え」

「俺も、…随分久し振りだから」

優しく耳から髪を梳かれた。

「あ…、少し、暗くしてもいいですか?」

「残念だけど、勿論、いいよ」

シーツの中に篭る。

ベッド脇のスタンドの明かりだけになった。

勇士さんはバスローブを脱ぎ捨て潜り込んで来た。

「もう要望は無いかな?
これから先は駄目って言っても止められないよ?」
熱っぽい瞳で見つめられた。

「…はい」

色が白くて滑らかで、綺麗な肌…。思った通り、引き締まった身体。

ゆっくりと…彼の唇に指に、囁きに、翻弄される。
顔を包まれ、愛おしいほど切ない表情で唇を重ねる。片手を取り、握る。髪が梳かれる。
熱い吐息が洩れる。
…塞がれる。
バスローブを開けられたのはいつなのか…記憶がない。
大丈夫だよ、て聞こえた気がした。

「あっ、…駄目」

「…駄目は無しだよ」

優しい声…。

「…あ…勇士さ、ん」

彼にしがみついた。

「絵里子…」

…初めて…名前…呼び捨て…。

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