したくてするのは恋じゃない


……ん?
どうやら少し眠ってしまったみたい。
何時だろう。

デジタルの数字に目をやろうと身体を捻った。

「起きた?」

耳触りの良い低音ボイスが囁く。

「寝顔が可愛すぎて、ずっと見てた。
……セクシーだね、綺麗だ、絵里子ちゃん…。
誘ってくれてるのかな?」

えっ?

キャッ、あろう事か、時間を見ようと捻った身体の丁度胸の辺りを…。
彼の顔の前に晒してしまっていた…。

もーっ!きゃーーーっ!慌てて頭までシーツを引き上げる。

シンデシマイタイ…。
ハズカシスギル…。
ナンテコト…。

「クスクス。絵里子ちゃん?大丈夫。見えてないから」

「えっ、でも、さっき、こんな近くで…」

篭ったまま応える。

「俺コンタクト、外してるから、だいたいで言ってみただけだよ?」

「本当?ですか?…」

「大丈夫、…本当だよ」

安心して鼻まで顔を出した。

「本当だよ。よく見えたのは」

ミシッとベッドが軋んだと思ったら覆いかぶさっていた。

「俺、コンタクトじゃないし。まだまだ裸眼でしっかり見えるし。…ばっちり」

…これは悪魔の囁きだ。…狼が現れた…。

シーツをずらされると、噛み付くような口づけに見舞われた。

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