したくてするのは恋じゃない
現実は近くまで迫っていた。
あんなに店に寄る度会ってた剣吾が、最近めっきり顔を見せない。
会わなければ気になるモノで不思議だ。
もしかして、あいつ、わざとかな?
印象付けようとして…だとしたら策士だな。
侮れないやつ…。
実際は違った。
久し振りに現れた剣吾は疲れがピークとでも言うのか、やつれ気味だった。珍しく髭も生やして、ワイルド剣吾だった。
やっと、ヤマ?が一段落したと言う。明日から三日間、なんの心配も無く、休みだと言う。
何だか疲れ切ってる剣吾をそのままにしたくなかった。
明日は土曜日。
私も休みだ。
「ねえ、剣吾。マスターのお店で聞くのも変だけど、食べたい物とか無い?」
「あ?何でも…。まともな物なら何でも食いたい」
「じゃあ、鍋とかは?」
「…ああ、いいな、…鍋。…旨そう」
今にも眠ってしまいそう。
「剣吾、これ」
鍵を渡す。
「これって…」
「うん。うちの部屋の鍵。鍋の材料買ってすぐ帰るから、先に帰ってて」
「お前…」
「とにかく。歩けるうちに、ね?
ちゃんと、部屋に辿り着いてよ?
場所、覚えてるわよね?あー、お風呂とか使ってていいから。…早く」
「……解った」