したくてするのは恋じゃない


カチャ。
剣吾がお風呂から上がって来た。
スウェット、着れたみたいだ。…下はちょっと短かったか。

ガシガシ頭を拭いている。


「丁度いいタイミング。鍋も出来てるから」

「剃刀とかパンツまで、サンキュ。さっぱり、スッキリした。
…美味そうだな」

テーブルの前に座って胡座をかいた。

「でしょ?ビール、どうする?」

「あ…、止めとく。飲みたいけど一口でも飲んだら効き過ぎてすぐ眠っちまいそうだ」

「じゃあ、烏龍茶でいい?」

「ああ、それで頼む」

受け取ると一気に飲み干したから、すぐ継ぎ足した。

「私、慌てちゃって。鍋の中身、好きな物聞かずしまいだったから、ごめん、寄せ鍋にしたよ?」

「ああ、これがいい。色々食えるし」

「ご飯は?」

「少しくれ」

「了解」

はいと、お茶碗を渡す。

「ん」

何だか勢いに任せて強引にしちゃったけど、冷静になるとこのシチュエーションは、非常にまずいかも…。
お風呂入れって言って、ご飯一緒に食べて、…しかも…明日から休みだってしっかり聞いてるし…。…。考え過ぎかな…。

まあ、剣吾が元気に成れば、それでいい。


「おい?、絵里子?…おい。ボーッとしてるけど、食わないのか?
ああ、冷めるの待ってるのか」

「あ、う、うん」

そうでもあったけど、そうでも無かった。
そういう事にしておいた。

< 56 / 64 >

この作品をシェア

pagetop