したくてするのは恋じゃない
「絵里子…」
その手をそっと外し、右手…左手の指に口づけられた。
勢いよくその手を引かれ、ドンと音がしそうなくらい胸の中にぶつかった。大事な物でも収めるように…背を丸め込み、抱きしめられた。
私の中の剣吾はずっと高校生のままの剣吾で…こんな風に力強さを感じたり、安心感があったりなんて、感じる相手だとは思わなかった。
愛してるとは違う。まだ遥か…程遠い。
でも、愛おしいと思った。
狂おしいくらい愛おしくて堪らない気がする。
剣吾にしがみつく。
もっと、もっと、強く抱きしめて欲しいと思った。
通じたのか…それとも、剣吾の思いなのか。
痛いくらい抱きしめられた。
「はぁ、絵里子。…好きだ。離したくない。
…好きだ。…好きだ」
剣吾…。こんなにも、沢山、好きだと言ってくれる。
それだけでいいと思った。今はこのままがいい。
「…剣吾、抱いて?」
「なんで疑問形?…」
身体を離して剣吾が聞く。
「だって…、何もかも自信ないし、…怖いから」
「絵里子……。枕持て。布団抱えろ!」
「ぇえっ」
何よいきなり。
「いーから」
「キャッ」
「ベッド行くぞぉ」
私、枕、布団。
纏めてベッドに運搬された。