したくてするのは恋じゃない
朝目覚めると、剣吾の腕の中だった。
この腕の中でずっと寝ていたんだ…。
寝顔が見たくて少し上を向いた。
「…絵里子、泣いてるのか?」
起きてたんだ。…涙…?、何だか潤んでいるのかも知れない。
「うん、何だかよく解んない…嬉しくて…なのかな、…解らない」
「そうか、…俺もだ。…なぁ、怖く無かっただろ?」
抱き込まれる。
…そう…剣吾は凄く、ずっと優しかった。
「うん…。怖いくらい、嬉しい…」
「フ。…そっか」
頭をぽんぽんと手で振れ、顔を手で挟まれた。
…下から突き上げるようなキスをされた。
また抱き込まれた。
はぁ…、夢じゃない…。
お互い服を着てない、見られてることが恥ずかしいとか、そんな事実はどうでもいい。
そんな事より、紛れも無く、剣吾が目の前にいるという事実。
ほっぺを抓ってみる、剣吾の。
「アタッ!いきなり何だ。どういうつもりだ、ぁあ゙?」
「ごめん、夢じゃないか確認?」
「こういうのは自分のを抓るもんだろうが…」
「そうだけど…ごめん」
少し赤くなってしまった頬に唇で触れたら…顔が赤くなった。
ガバッと抱きしめられた。
「絵里子、…気持ちいい。…昨夜は目茶苦茶気持ち良かった」
赤くなった顔を隠す為に抱きついたのかと思ったら…。
「……ゔ、この、エロ剣吾」
「そう言えばさ、俺がしばらく来れなかった間、マスターと何にも無かっただろうな?」
「う。…無かったと言えば無かったけど、アッタに近い無かったは、あったかも」
「何じゃそれ。理解に苦しむ。…無かったってことか」
「…でも、随分論理的に諭してくれたし、ずっと紳士だった。
…恋を教えてくれた」
「…やっぱ何かあったのか?」
「いや、上手く言えないけど、何もないよ、あっ、キスはされたけどね」
「何ぃ!?あんのオッサン…、やっぱり紳士じゃないじゃん」
「いや、紳士だよ。狼だけど」
「なっにー!?」
− 完 −