したくてするのは恋じゃない
おまけ
−絵里子Side−


相変わらずマスターのお店には来ている。

来ることは約束だから。

そして紆余曲折あっても、お互い“大人"だから、元のような付き合いをする努力をしている。

ぎこちない。まだまだ。
でもそれが、紛れも無く“恋した"という真実。


「まだまだ。永遠に諦めるつもりはありませんからね」

なんてマスターが言うものだから、剣吾がものすごく警戒する。
いつも一緒に居られる訳ではないから。

恋をしている。これが恋。そう認めると癪だけど…。それは相手が剣吾だから。

今は悔しいくらい剣吾に夢中だと思う。少しでも一緒に居たいと思ってしまう。

…でも、恋だ。先を考えないのが恋だ、と私は思ってる。

善くも悪くも、自然に結果はついて来るモノだと、それでいいと思ってる。

途中まで読んでいた恋愛小説。結局、最後まで読まずにどこかへ紛れてしまった。だけど…特に気にならない。

小説の主人公にとって、どちらがハッピーエンドだったのか、選択はバッドエンドだったのかは解らない。


事実は小説より奇なり、って言う。

恋に夢中になってる現実の私の恋の方が、ずっと“奇なり”だから。

< 62 / 64 >

この作品をシェア

pagetop