したくてするのは恋じゃない
「ご馳走様でした」
手を合わせて挨拶する。
沈黙の中、黙々と食べ続けた。
慣れない事言うもんじゃない。
折角の美味しいオムライス。その為に来たのに。
後半殆ど味わえなかったではないか。トホホ…。
珈琲に口を付ける。
沈黙は続いていた。
マスターはいつの間にかカウンターの中に居た。
食べ終えたお皿を引いていた。
「絵里子ちゃん…、キスしようか」
ブーーーッ。
噴き出してしまった。
「…ごめんなさい」
マスターは笑ってカウンターを拭いていた。
「いや、ごめんごめん。
黙り込ませちゃったからね、親父ギャグ的な?
困らせちゃったね…ごめんね」
「…すいません。私が悪いんです。
今日に限って、普段言わないような事言ってみたから」
何だか申し訳なくて、うなだれた。
「…絵里子ちゃん。やっぱりキスさせて…」
言葉と同時に両手で頬を挟むと顔を上向けられた。
上唇を軽く食まれた、下唇も。そのまま唇を合わされ角度を変えて深くなった。
…柔らかい。…溶けそう。甘い、なんて甘いんだ。
そう思ったら身体がカーッと熱くなって来た。
ゆっくり顔が離れていく。……ぁ、…。
「参ったな。そんな顔されちゃ…」
はっ、私、変顔になってる?もしかして。
それとも変態みたいなエロ顔になってるの?
「フッ。百面相してる?
悩ませちゃったかな…。
あ、もしかして、許可なくしちゃったからこれは犯罪になるのかなー」
「あ…犯罪だなんて…それは大丈夫です。訴えたりしませんから」
「事故だと思って堪えてくれるかな?」
「事故だなんて…そんな」
「勿論、俺は、事故にするつもりないから」
チュとおでこに、そして頭に軽く口づけられた。
…ハァ何が起こっているの。