抱き寄せて、キスをして《短編》
「商品券です」

こらー!

そーゆー意味じゃないっつーの!

商品券でもお米券でもビール券でも、そこは関係ないわ!

「新太」

静かに私が呼ぶと、彼は涼やかな眼を私に向けてニッコリ笑った。

「言っただろ」

「何を」

僅かに不機嫌な私の声を素早く察知し、加奈ちゃんはガタンと立ち上がった。

「いっけなあいっ!
彼氏が家に来るんです!
後はお二人でごゆっくり!
ではまた来週!」

なにが、『ではまた来週!』だよ、ニュースキャスターかお前はっ!
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