抱き寄せて、キスをして《短編》
風のように去っていく加奈ちゃんの後ろ姿が消えると、私は新太をジッと見つめた。

「新太、さっきの話だけど」

「あー、腹一杯。アンナ、帰ろ」

「……帰ったらちゃんと話す!?」

「話すー」

……語尾伸ばしてんじゃねえ!

私は黙って立ち上がった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私のマンションに着くと新太は、

「あー、サッパリしたい。シャワー、シャワー」

……もしかして、『成功報酬』の言い訳を考える時間稼ぎか?

……まあ、いい。

私は冷蔵庫からスタイニーを取り出すと、勢いよく栓を開けて豪快にあおった。
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