抱き寄せて、キスをして《短編》
私はLINEで新太と短いやり取りを済ますと、昼休みを切り上げて仕事に取りかかった。

実は今日は忙しい。

けど、新太との待ち合わせに遅れないようにしたい。

「昼ぐらいしっかり休めよ」

三崎課長がチラッと視線を上げて私を見た。

「今日はあまり長く残業出来ないんです」

「デートか」

は?

なに、こんな質問してくるような人だったっけ?

それとも皆が昼休憩で出払ってるから、軽い気持ちで訊いてみたとか?

私が三崎課長を見つめていると、彼は手元に視線を落として呟くように言った。

「悪い」
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