抱き寄せて、キスをして《短編》
私は暴れた。

ふたりに距離が生まれ、唇が離れる。

私はすかさず叫んだ。

「加奈ちゃんに悪いって思わないの!?」

「思わない」

斬って捨てるように、新太が冷たい声を放った。

「な、んで」

新太はこんな人だった?

出来たばかりの恋人を裏切るような男だった?

なんなの?なんで?

「新太、どうしたのよ!?変だよ、新太。私達はもうそんなんじゃないでしょ?」

新太は拳を握りしめたまま、私から顔を背けた。
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