抱き寄せて、キスをして《短編》
「答えろよっ!」

「いい加減にしろっ!!新太のバカッ!」

新太が、我に返ったように眼を見開いた。

「新太……」

新太は小刻みに頭を左右に振ると、苦しげに顔を歪めた。

「アンナ……」

足早に新太は去っていってしまい、私はガタガタと震える体を自身の腕で抱き締めた。

ポツポツと雨が降り始めていたが、私は全く気付いてはいなかった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

翌日、私は加奈ちゃんの眼を見れなかった。

加奈ちゃんの恋人である新太と、キスをしてしまったから。
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