抱き寄せて、キスをして《短編》
「あははは!すみません。三崎さん、何が観たいですか?」

私がそう言うと、課長は人混みも気にせずに私を引き寄せて、腰に手を回した。

「いつか、翔矢って呼んでくれるか?」

「か、ちょう……」

「アンナ」

課長が綺麗な唇を私の頬に寄せた。

「んっ、くすぐったい」

思わず首を縮めた時、信じられない光景が眼に飛び込んできた。

加奈ちゃんがいたの。

彼氏と。

腕を組んでにっこり笑っている加奈ちゃんは、相変わらずウルウル系女子だった。

でも、違ったの。
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