抱き寄せて、キスをして《短編》
代わりに中高で整った顔が際立っていた。

男らしい眉の下の、クッキリとした二重の涼しげな眼。

いつもより、明度の高いグレーのスーツ。

なに、どうしたの。

なんで急にあか抜けたの。

前と違う新太は、私を見る眼もまるで違っていた。

『アンナ、今日暇?暇なら買い出し一緒に行こ』

『アンナ、俺さ、今日は飲みたい気分なんだ。付き合ってよ』

いつも私を見つめる柔らかな眼差しが、そこにはなかった。

目の前のあか抜けた新太は、私を侮蔑の表情で一瞥すると、自販機に小銭を入れ、目当てのジュースを買うと何も言わずに、私の身体を避けるようにして去っていった。
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