抱き寄せて、キスをして《短編》
「仲直りって?」

「…………」

新太が笑った。

「また、前みたいな関係に戻ろうって?」

私は恐る恐る新太を見た。

彼は私を真っ直ぐ見つめていた。

「もう戻れない。もうだめなんだよ、アンナ。俺達は間違ってた」

私は何も言えなかった。

だって、新太が正しいから。

ただの同期入社の私と新太は、それ以上の関係だった。

友達や親友の間に、体の関係なんて発生しない。

なのに、私は新太と寝た。

けれど、私達はお互いに恋愛対象外で。
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