抱き寄せて、キスをして《短編》
「お互い様だよ。俺だってズルかったんだ。
アンナに気がないフリして、アンナを抱いてた。
心の中で、愛してるって叫びながら」

「新太、新太」

私は、新太の背中に回した腕に力を込めた。

「新太、大好きだよ、大好きだよ」

「アンナ、俺の恋人になってくれる?」

「うん、うん、なる」

新太は私を見てニッコリと笑った。

「ずっとずっと好きだったよ。アンナ愛してる」

「新太ぁっ!」

新太は私の身体を確認するように撫でた。

「こんなにやつれて……俺のせいだよね。ごめん、アンナ」

新太は心配そうに続けた。
< 94 / 108 >

この作品をシェア

pagetop