アイ
時計を見ると、授業が始まってまだ20分。
この16歳という年齢のなかで、美術の残り30分は楽しい時間なんじゃないかと思う。
談笑して笑い合える友達と時々赤野から提示された内容を進めながら、授業‥‥というか半分自由時間のようなものをうける。
といっても、私は例外なんだけど。
さっき話しかけてきた彼女を見ると、別の人と楽しそうに話をしていた。
唇の色が抜け落ちた彼女を見て自分に嫌気がさすと、少し無心になろうとまたデッサンを始める。
赤野の出した自分の筆箱を書く、という課題内容を無視してがでかでかと誰か知らない片目を真ん中に勝手に書き進める。
(なかなか、ね)
そう、自分の絵を見て心の中で呟く。